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【秋のオンライン特別講座】「変わらないために、変わり続ける。」~株式会社藤い屋代表取締役社長 藤井嘉人先生~


宮島の美しい景色に囲まれながら生まれ育った藤井嘉人(ふじいよしひと)さん。幼い時から和菓子とのご縁を大事に、34歳という若さで、もみじ饅頭(まんじゅう)で有名な株式会社藤い屋の社長に就任。「変わらず守っていくために、変わり続ける」とはどんなことなのか、廿日市市とのつながりやお客様との気持ちの共有についてお話を伺いました。


■守るために新しいことに挑戦する

「これから100年先ももみじ饅頭を作り続けていきたい。そのためには、子どもたちに餡(あん)を幼い頃から日常的に食べてもらいたい」和洋菓子を販売するお店“古今果(ここんか)”ブランドを新たに作ったのには、そんな藤井さんの思いがありました。もみじ饅頭といえば、こし餡というイメージがありますよね。この講座の参加者のみなさんにも伺うと、こし餡と答える方が多かったです。藤井さんは“餡”に重きを置き、幼い時から餡の存在が日常であり、かつ大人になっても食べ続けられることを目標に“古今果”を発展させています。

世の中に「変化は当たり前」であって、不変なことなどないと藤井さん。向き合うべきこととして大事なことは、その変化にどのように対応していくかであると。現在、新型コロナウイルスの影響に耐えながらも、今は取り組んでいる農業に集中しあまり考えすぎないようにしているそう。また時間を見つけては、今までの制限を取っ払って、餡の魅力を伝える方法を模索されています。


■地域とのつながりの大切さ

廿日市市佐伯町に小豆を育てる“畑LABO”があります。もともと小豆は北海道から仕入れていましたが、生産量の減少などで仕入れが難しくなったこともあり、近くで小豆が手に入れられるようにと考案されました。ここでは耕作されていない荒れた田んぼを開墾し小豆を作っています。藤井さんが何より大事にしているのは“小豆の栽培モデルケース”です。このモデルを地域の農家さんが参考にして新たに栽培を始めることにより休耕田の活用が増えたり、田んぼに「人がいる」ことで地域の人が安心したりという効果も考えています。“畑 LABO”を作るにあたって、藤井さんは畑の近所の方にアドバイスをもらっていると、廿日市市に住んでいても知らなかったことが多くあると気づかされるといいます。そして時には次の新しいお菓子の開発につながるになるのでは!というアイデアをもらえる時もあるそうです。

もみじ饅頭は宮島で生まれ、広島の名産物とされていますが、その素材である小豆自体もいつかすべて広島県廿日市市産とし、地域の人と関わり合いながら作り上げていきたい。藤井さんはまっすぐな気持ちを伝えてくださいました。

■気持ちの共有

お菓子の素材が育つところから、生産工場でお菓子が出来上がるまでのプロセスを直接感じることのできる“IROHA village”。ここでは小豆や小麦が実際どのように育つのか、材料についても知ることができます。IROHA villageの工場には旧工場にはなかった“窓”を設置。それは職人さんにこの窓から見える春夏秋冬の景色を感じてほしいから。そして職人さんの作業の様子も見ることで、お客様にも職人さんの思いも一緒に共有してほしい。きっとお客様はここで感じた気持ちのおかげで、お菓子を食べた時により一層美味しさが増すと思います。見た目は一緒のもみじ饅頭ではあるけれど、四季折々に感じる心は違う。そんな職人さんの心を映し出した、その時その時に出来上がるお菓子を大事にされています。


■質問タイム

最後に参加者の皆さんからの疑問や質問に藤井さんが答えていただきました。

○効率が重視される中で、むしろ手間のかかる“畑LABO”や“IROHA village”を始められた理由とは?

 元々自分で確かめてみないと気が済まない性格でして、「〜らしいよ」という言葉を他の人から聞いても「本当かな?」と思ってしまうタイプなんです。例えば、機械化をすれば作業効率が上がると言われますが、実際に現場(工場)に入ってみると、人の手で作業するのがとても早いことに気づいたんです。僕がぱっと入っても追いつかないくらい。だから、人材を減らして機械を取り入れることはあまり効果がないのではと思ったりして。むしろ手作業の方が早くて良いなと思ったんです。だから機械の導入をオススメされてもあまり信じられなくて(笑)。

○1日にどれくらいもみじ饅頭は生産されますか?

 今は新型コロナウイルスの影響で通常どおりにはいきませんが、普通の時期であれば1日5・6万個ですね。

○他のもみじ饅頭のお店と関わりはありますか?

 お菓子の組合がありまして、そこで年に何回か集まりがあります。そのお菓子の組合で宮島のお祭りのお手伝いをすることがあります。商売だけでもなくて宮島のまちの取り組みに組合で参加するって感じです。

○“畑LABO”などで収穫された材料でできた商品は出ているのですか?

 うまくいけば今年の10月中旬に小豆が収穫されて、12月くらいには廿日市市産の餡を使った商品が販売できると思います。しかし今年は梅雨が長く、また逆に育ってくれないといけない時期に水不足になるなど気候的に難しかったので、どれくらい最終的に収穫できるかなって気になっています。

藤井さんは「お菓子は心の鏡」だといいます。今回の講座を受けて本当にその通りだなと感じました。受け継がれた伝統を守っていくためには、自ら変化し続ける。地域とのつながりを試み、愛をもって作っているお菓子を、素材からお客様に知ってもらうための努力に感銘を受けました。これから販売される予定の廿日市市の畑で育った餡を使った商品をいち早く食べてみたいと思いました。

レポート:藤原杏(学生レポーター)