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【秋のオンライン特別講座】「あなたの知らない宮島。」〜宮島郷土史家・厳島随筆家・詩人 舩附 洋子先生~


「宮島では例年10月10日頃の気候」という、秋晴れの空が高く広がる気持ちのいい9月中旬の朝。宮島に生まれ育ち、歴史・民俗・文化を研究、発信し続ける舩附洋子(ふなつきようこ)先生をトップバッターに、7時間に及ぶ廿学 秋のオンライン特別講座の1つ目「あなたの知らない宮島。」が始まりました。進行は、廿学スタッフのNPO法人ひろしまジン大学のキムラミチタさんと平尾順平さん。慣れないオンラインでの開催に集まった参加者は、幅広い世代から総勢41名。みなさん、少し緊張気味ですが、笑顔の絶えない先生とフレンドリーな空気に、徐々に場が和んでいきます。


現在も息づく昭和30年代の暮らしと建築

開始早々、今朝見つけたセミの抜け殻を見せてくれつつ、先生から次々と宮島トリビアが繰り出されます。

「宮島人は、セミの抜け殻を『まごじい』、神社は『じんしゃ』、しゃもじは『しゃくし』、路地のことは小路(しょうじ)と呼ぶの。あと、高山植物の『せっこく』、『しのぶ』がみんな大好きでね。魚屋でもらった大きな貝殻に植えて、針金でぶらさげて観葉植物として楽しむんよ」

廿日市市民も知らない独特の文化に「へぇ〜!」と驚きつつ、ここでしか聴けない話に、参加者は熱心にメモを取ります。


「今もスーパーやコンビニはないから、肉屋・魚屋・八百屋は、朝イチ5時台の船で広島へ仕入れに行って、8時過ぎには帰ってくる。宮島人はそれに合わせて8時半頃から買い物に行くのが習慣。町家通りのお店では宮島弁が飛び交っているから、そこに行けば地元のことがよく分かりますよ」

住民はみんな知り合いという土地柄、買い物に行くと、あちこちでおしゃべりに花が咲くのだとか。子どもの頃、お使いを頼まれた先生がなかなか帰ってこないので、しびれを切らしたお母さんは、別の料理を作り始めていたというほほえましいエピソードも。


お話は、宮島特有の建築に移っていきます。

「家に柵をしておかないと、鹿にみんな食べられてしまうので、手を離したら自然と閉まる設計の『鹿戸(しかど)』があります。『神の使い』である鹿を大切にしつつ、人と鹿が共存する工夫。鹿は押せるけど引けない。でも、飼い猫は爪で引っ掻いて開けられるでしょ?」

と、愛猫家ならではの一言も。猫が引き戸を開けているところを想像すると、なんだか可愛いですね。



■「宮島の音」に耳を傾ける

「宮島の見てほしいポイントは?」という質問には、幻想的な情景を教えてくれました。

「ぜひ宮島に泊まって、早起きして海岸通りへ行ってほしい。神社にお参りに行くと、野鳥の甲高い声や、潮の寄せる音がすごく綺麗に聞こえる。大鳥居の角に見守るように止まっているサギを見ると、神様の存在を感じます。まだ生活の音がしていない時間帯は、神秘的で大好きな風景です」

島に人が住む前からある音。私たちが観光の目的地として、神社や水族館に行っている時には気付かない音。その光景を想像すると、生命の息吹が感じられるようです。



活動の原動力

残り時間も少なくなってきた頃、先生の大ファンという参加者から、「去年まで市役所で働かれ、郷土史家や詩人としても活躍されていますが、その二足の草鞋(わらじ)の原動力は何ですか?」という質問が寄せられました。

ニコニコしながら先生が教えてくれたのは、2つのきっかけでした。


1つ目は、宮島で中学校の教頭をしていたお父さまとの思い出。写真家としても活動されていたお父さまは、少ない教員の給与からカメラやフィルムを調達し、何冊も写真集を出されていたのだとか。先生は幼稚園に通う前から、嫌がりつつも撮影を手伝ううち、自然と背中を見ていたのが、今につながる原体験となったそう。


2つ目は、先生が詩やエッセイを書き出した19歳の頃の出来事。ある日、浜へ貝掘りに行こうとした先生はヘドロで滑り、宮島の公害を目の当たりにしてショックを受けます。その様子を見た親友から「宮島に注目しなさい、あなたの仕事は宮島だ」と言われ、「伝えなければならない」という思いが培われたそうです。



授業も終盤になり、パソコン越しにも先生の情熱は、ひしひしと伝わってきます。

「宮島を愛しとるんですよ。好きで好きで仕方ない。大好き。先人たちが築いてきた長い歴史があり、私たちは、その一瞬を生きとる。先人たちの思いを伝えていくため、死ぬまで宮島を追究していきたい。みんな宮島を愛してください!」

熱い思いを受け取った参加者から「宮島に行きたくなる」「今日泊まります」という感想が寄せられ、先生は「24時間することは沢山ありますよ」といたずらっぽく笑いました。


溢れる愛と繊細な感性に誘われて、今すぐ散策したくなる1時間でした。ぜひ皆さんも先生の言葉を手がかりに、未知の宮島を発見してください!

レポート:松田美紀